九尾の狐

九尾の狐


尾が九つにも分かれている九尾の狐は、幸慶のシンボルとされ、
王法が明らかに天下が良く治まり、君主の徳が鳥獣にも及べば出現すると言われていた。


九尾の狐に当たる伝承

『白虎通』より
 君主の徳が人はおろか鳥獣にまで及ぶ時には九尾の狐が出現する。
九という数は極数で、それ以上の数は無い。
その数が尾に現れている九尾の狐はまさに子孫繁栄の象徴である。

 九尾の狐は吉祥の瑞獣であって、日本でも「延喜式」の中でも、上瑞に挙げられる。
しかし一般にはむしろ妖獣として扱われている。

 金毛九尾の妖狐は、大漢和辞典に寄れば
「中国に於いて妲妃となり、後に天竺で華陽婦人と化現し、
 周の時再び中国に入り褒女似となって現れ、後代我が国に来たり、
 玉藻の前となって鳥羽天皇を悩まし奏り、安倍泰親に見現わせて、
 下野国那須野原に討たれ、その霊が化して、殺生石となった。」
とされ、日本ではむしろ凶いものと考えられています。
しかし、本来は身体の末、尻尾が九にも岐れていて吉祥を示す獣である。


信太妻

「和泉国泉北軍信太村、信太稲荷の縁起
 信太の森の狐は、安倍保名に生命を助けられ、葛の葉という娘に化けて、保名の妻となりました。
 二人の間には童子丸という男の子まで生まれましたが、ある日正体が現れ、その為
 恋しくば たづねきてみよ 和泉なる 信太の森の うらみ葛の葉
 という歌を残して去ったのです。
 童子丸は成長し、後にこうめい安倍清明という陰陽師になったのです。」
後日譚があります。
 童子丸があまりにも母を慕うので保名が信太の森に連れて行くと、葛の葉も一時姿を見せたと伝えられています。


 母が別れて行く時、鳥の声や獣の話を理解することのできる呪物の杖や頭巾を子供に残して行ったという話もあります。

「安倍保名は妻が病気で実家に帰っている時、簀巻が流れて来たので拾うと白狐が入っていたので、これを助けました。
 後日、この狐が女に化けて訪ねて来ました。
 女中に使っている間に夫婦になり、童子丸が生まれました。
 母が庭を掃く姿を見て子供には狐ということが分かりましたが、保名には分からなかったのです。
 ある時、天井から見ると狐という事が知れてしまいました。
 母狐は保名が気づいた事を知ると
 恋しくば 訪ねてみよ 和泉なる 信太の森の 裏見葛の葉
 と書いて、子供に仕込み杖を残して森へ帰って行きました。
 この杖は耳に当てると獣の話が聞こえるという呪宝です。」


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